第4章 いきなり突撃!~プレイ模様その中盤戦
前述したように、以前、TRPGの基本的なことを説明した際(〈前編〉参照)、併せてキャラクターシートの見方、基本的に良く出てくる専門用語(必要最低限レベルのみ。能力値、技能、セーヴィング・スロー、HP、AC、イニシアチブ等)、そして判定ルールについては説明してありましたが、今回のプレイでは、わざといちいち説明を繰り返しながら(←但し簡潔に)、ゲームを進めていきました。文章内で繰り返すとくどくなるので、以下、その辺のやりとりはほぼカットして話を進めさせてもらいます。
DM「ここは自然にできた洞窟に、ゴブリンどもが手を加えて棲みやすいダンジョンに作り変えた場所のようだね。歩きやすい。所々に火のついた松明が壁に取り付けられていることにして、特にランプとか明りは必要としないことにしよう。さてさて、メルクルから見て、真っ直ぐに通路が先に延びており、奥まったところが右と左にそれぞれ道がわかれています。で、その道がわかれている中央奥側の壁に、意味ありげな頑丈そうな扉が取り付けられていました。どうする?」
小①PY「え、どうするの?」
DM「冒険者がよくおこなう行動としては、通路に罠が隠されていないか、モンスターが潜んでないか、注意深く確認しながら少しずつ進んで行く、とかだね」
小①PY「そうなんだ。どうやって様子を見るの?」
DM「では、技能の〈知覚〉を振ってください。難易度は10にしよう。あ、知覚と言うのは、遠い・近いの意味のちかく、ではなくて、見たり・聞いたり・察したり、と言うことを難しい言葉で知覚、と言うんだね、そういう意味での判定です」
小①PY「やっとサイコロ振れる!! ドキドキ、エイッ! ・・・あ、ダメだ、失敗しちゃった。ガーン・・・」
DM「残念。ではメルクルは、特に何も気が付きません。どうします?」
小①PY「じゃ、先の方へ歩いていきます!」
面白いことに、NPCと会話だけのやりとりの際はどうしていいのか分からず自信なさげだったのに、目の前に用意されたダンジョンタイルやらメルクルのフィギュアを使う展開部分に進んだら、喜々として身を乗り出し、広げられたダンジョンの先の方を自ら率先して指差したりし始めました。
やはり、言葉の説明だけよりも、実際に目の前に“視覚的に状況が分かる具体的な物”が置かれ提示されると、意味合いが分かりやすいことから、自信ある行動(案)が生まれてくるんでしょうね。
DM「先ってどこまでですか?」
小①PY「道を右に折れて、どうなっているのかその先まで!」
DM「え、え?! ちょっと待って。確かに行こうと思えば実行できるけど、危険なダンジョンにいるわけだから、冒険者なら注意深く進んでいくと思うな。わかれ道の手前まで行って、安全を確かめる為にチラリと角から奥を覗き込むとかね。大抵はそうするもんだよ」
小①PY「ふーん、そうなんだ。じゃ、角まで行ってみます」
DM「じゃ、メルクルのフィギュアを自分で動かしていいよ」
小①PY「トコトコトコ・・・(←律儀に1マスずつ、ちゃんと移動させている)」
DM「はい。じゃ、そこからそっと覗き込んだところ、『ウワッ!』 曲がり角の先の方から1体のゴブリンがちょうど君のいる方へ歩いてきたところでした。お互いにビックリします」
小①PY「ヤバッ!!」
DM「おそらくダンジョンをパトロールしている見張りのゴブリンだと思われます(←DM、ゴブリンのフィギュアを1体配置)」
小①PY「ゴブリンの人形、小っちゃ! なんか弱そう~」
DM「うーん、そうね。ゴブリンは初級冒険者向けの弱い敵だからね。では、戦闘ラウンドに突入します。まずはイニシアチブ判定と言って、どちらが先に、どちらが後に行動するかを決めますね」
喜々として20面ダイスを振る小①PY。サイコロを転がすのが面白くてしょうがないようです。
先攻はメルクル、後攻はパトロール兵ゴブリンになりました。
小①PYはメルクルのフィギュアをゴブリンに接敵させます。
小①PY「攻撃・・・コロコロ・・・当たった! ダメージは6ポイント!」
DM「凄い攻撃にゴブリンはフラフラし始めた。こちらの攻撃ロールは・・・コロコロ・・・失敗! では、次のラウンド、またメルクルの攻撃どうぞ」
小①PY「コロコロ・・・当たった! ダメージは7ポイント!」
DM「『ぐあっ!』 バタリ! パトロール兵ゴブリンは前のめりに倒れて動かなくなりました」
小①PY「やっつけた! じゃ、先に進みます!」
DM「あの、目の前に扉があるんだけど、どうしますか?」
小①PY「そこはいい。あとにして、右の道を先に進んでいく。どうなってるのか気になるから~」
DM「あ、そうなのね。いいよ。では、右の通路を進んでいくと、今度は左に折れて、そのすぐ先に普通の木の扉が見えました」
小①PY「えーと、扉の前まで行く」
DM「そしてどうしますか?」
小①PY「えーと、こういう時も、様子を調べます・・・でいいの?」
DM「はい」
DMの指示で、メルクルは〈知覚〉判定をして成功。扉の奥にゴブリンの気配を感じます。
小①PY「よし、ドアをバンッと開けて突撃します! ビックリ、サプラ~イズ!!」
この辺はサークルの例会の様子を見てて覚えたことなんでしょうが、見事に再現してました。
DM「じゃ、中にはくつろいでいた2体のゴブリンがいて、突然のことにビックリしてまだ動けません。ちなみのこの部屋はゴブリン達の寝床のようで、ボロボロのベットやゴミが散乱してます。驚かせ不意討ちできたのでメルクルが先に行動できますよ」
小①PY「じゃ、前にいるやつの隣のマスまで進んで、攻撃します。コロコロ・・・成功! ダメージは、おーッ、やたーッ! 最高の8の目が出たよ! 12ポイントのダメージ!」
DM「そりゃすごい。一撃で一匹目は倒れたぞ。ではイニシアチブね」
メルクル先攻、ゴブリン後攻になります。
小①PY「攻撃・・・コロコロ・・・あ、20が出た!」
DM「エエッ?! すごいね?! それはクリティカル・ヒットと言う、凄い大成功を意味してて、ダメージ・ロールを2回振れるんだよ」
小①PY「そうなんだ?! やたーッ!! コロコロ・・・14ポイントのダメージ!!」
DM「こりゃたまらん。2匹目も、あっという間に倒されてしまったのでした」
小①PY「やっつけたよ。どうするの?」
DM「倒したモンスターの装備や衣服のポケット、あとこの部屋に何かないのか、普通なら冒険者は捜索するね。あ、調べるという意味ね」
小①PY「宝物ないかとか?」
DM「そうそう、それそれ。今までもやってきた〈知覚〉判定ね」
戦闘シーンでの出目の良さの反動が来たのか、〈知覚〉判定は失敗に終わり、特に何も発見できなかったメルクルは早々に道を引き返し、もう片方の通路を奥まで進んでいくのでした。
第5章 ダイス目よすぎ!~プレイ模様その後半戦
DM「では、こちら側の通路の方も一番奥に、似たような木のボロっちい扉があります」
小①PY「様子を見ます」
良くある段取りやルールを覚えてもらう為にもと、わざと似たような場面を繰り返し、今回も〈知覚〉判定を要求しました。が、今回は残念ながら失敗。
DM「例えば、何も聞こえない、おかしな気配も感じられない・・・からと言って、この状況下で、用心しないでバ~ンと開けてしまうというのもおかしいので、念の為、少しだけ開いて中を覗く、と言うのでも良いよ」
小①PY「うん、じゃ、そ~っと覗き込む。チラリ」
DM「すると中は先程と同じような大きさの部屋だったのだけど、中はボロっちいけどテーブルやイスやタンスがあったりと、ちょっぴり豪華な部屋だった。そこに、今までと同じゴブリンと、今まで見たこともないような体の大きなゴブリン――おそらくこのダンジョンのボスだろうね、がいて、2匹で何かを話しており、まだ君には気が付いていません」
小①PY「ボス?! よっしゃ、やっつける! 突撃~!!」
DM「了解、了解。不意討ちは成功するよ。配置からして、手前の小さいゴブリンまで移動して、攻撃だね?」
小①PY「うん。(トコトコトコとメルクルを動かし)攻撃・・・コロコロ・・・あ、失敗しちゃった! ガーン・・・残念」
改めてラウンド開始と言うことで、イニシアチブ判定。やっぱりメルクルが先行、ゴブリンが後攻に。不思議とこの順番が繰り返されますな。
小①PY「行くぞ~、攻撃! ・・・コロコロ・・・あッ、また20が出たよ!!」
DM「えええっ?! よ、よく出るなぁ。ダメージは2回ロールだよ」
小①PY「12ポイントのダメージ!」
DM「一撃のもとに子分ゴブリンは葬り去られたのでした。ではでは、こちらのボス・ゴブリンの行動ね。メルクルの隣のマスに移動して、シミター・・・えっとそういう名前の剣で、攻撃してきます。強いボスなので、なんと2回攻撃ができちゃうんだな」
小①PY「剣? 棒みたいなの持ってるよ!」
DM「・・・は? ボウ? ・・・棒???」
何を言っているのかと小①PYを見たら、配置しておいたボス・ゴブリンのフィギュアをまじまじと見つめています。なるほど、確かにそのフィギュアは柄が長く刃の短い斧状のもの(ピック?)を天に向かって掲げている造形をしています。どう見てもシミターは持っていません。棒っぽいものを持っている風に見えます。
うちの子は目の前に提示されているジオラマ風景がその場の本当の状況と捉えているようで、間違っていませんよね。僕のように状況慣れしてる場合、たまたまマスターが持ってて配置してきたフィギュアの形がそうな訳で、マスターが説明している状況に合わせて補正をかけると言うのが常識化しているだけの話。今のこの状況の場合、一方的に、そういうものだと分かっている、伝わっている、と判断した僕の方が間違っていたわけです。これまた説明不足の僕のミスでした。
DM「そうね。説明できてませんでした。たまたま用意したボス・ゴブリンのフィギュアの形がそうと言うだけで、“ゲーム世界の中の方”では、イメージとしてはそのボス・ゴブリンは大きな剣を持っていることにして下さい」
小①PY「そうなんだ、うん、分かった」
DM「じゃ、改めて2回攻撃だ! コロコロ・・・なんと、2回ともに失敗だと?!」
小①PY「フーッ、やばいやばい、当たったら死んじゃう~。じゃ、メルクルの攻撃ね。コロコロ・・・やりぃ、当たった! ダメージは・・・あッ、また一番大きな8の目が出た! ダメージは12ポイントだよ!」
DM「本当に、いい目、良く出るぁ~。こちらのHPはだいぶ減っているよ。じゃ、こちらの2回攻撃ね! ・・・コロコロ・・・1回目失敗、コロコロ・・・2回目は、あ、1足りない・・・ガ~ン!」
小①PY「(ニコニコしながらダイスを両手で挟んで手のひらで揉んでから振る)よしっ、行くぞ~、攻撃!! ・・・コロコロ・・・やたーッ! 成功だよ! ダメージは10ポイント!」
DM「うーん、なんて出目に恵まれている冒険者なんだ~。このダンジョンに巣食っているゴブリン達はあっという間に全部、倒されてしまったのでした」
メルクルが部屋の中を捜索すると、2つの鍵が出てきました。
小①PY「鍵が2つ・・・分かった! まだ開けてない最初に見た扉が鍵付きで、それを開ける為のものなんじゃない?! でも、もう1つはなんだろう・・・?」
DM「お察しがよろしい様で。では、メルクルは最初に見た扉の前に戻りますか?」
小①PY「うん」
DM「君が想像したように、まさしく扉は頑丈な鍵が掛かっていて、見つけたうちのひとつが、そこを開ける為の鍵だったのです」
小①PY「やっぱりね。開けます!」
DM「開けると、ガランとした部屋の中央に、宝箱がありました」
小①PY「村長さんが言ってたやつだな!? 中は何だろう!? 多分、残りの鍵がこれを開けるものなんじゃない?!(←興奮して早口になってる人)」
DM「はい! やはり鍵が掛かっていたけど、残りのもうひとつの鍵で開けられました。ふたを開けると、たくさんの金貨が入っています」
小①PY「わ~お! やたーッ! いただき!」
DM「こうしてメルクルは村を困らせているゴブリン達を退治し、宝物も手に入れ、無事に最初の村へと引き返してきたのでした。村人のおじさんもおばさんも、村長さんも、何度も『ありがとう、ありがとう』とメルクルにお礼を言い、美味しい物をごちそうしてくれた上に、保存食をたくさんくれたのでした。君は旅の途中だし、また新しい冒険を求めて村から旅立って行ったのです。今回の冒険は、これで、お・し・ま・い」
一人プレイヤーでしたが、子供はひと通りD&Dを最初から最後までプレイでき、大変に満足したようでした。
最後に
その日の夜、他の家族がいるところでうちの子がD&Dについて熱く語っていました。
「おもしろかった~!」
「今度はいつD&Dやるの?」
「明日またD&Dやろう! 悪いドラゴン出して! やっつけるから!」
また遊びたいという要求が出てきたということは、そうとう面白く感じ、気に入ったことを意味しているのでしょう。
「メルクルはドラゴンをやっつけたんだよね~!」
「メルクルは森を抜け、海へと出て、船に乗ったんだよ~!」
いつの間にやら、こんな風に想像の中で、メルクルの物語や活躍図を展開させ自分の中で遊んでいるくらいです、この子の中にイマジネーションを膨らませ展開させるだけの強い影響力をD&Dゲームは持っていたのでしょう。
細かなルールや専門用語は1回のプレイだけですし、それほど憶えられませんでしたが、冒険者としての行為を何か行う、戦闘で命中判定を行う――こういう時に、目標とする値を目指して20面体を振って修正を足し、同じ数かそれより上を出せば成功、と言う基本ルールはあっという間に憶えてしまったようでした。こちらが何を言わずとも、判定しなければならない空気が伝わると、自然と20面体を手にしていましたからね。
配慮すべき点はいくつもあるかも知れませんが、D&D5版、周囲のサポートさえあれば小①でも十分遊べるTRPGであると思えたものです。
そして、TRPGに初めて取り組む子供の姿を見ることは、TRPG慣れしてしまった大人に初心を思い起こさせる良い教師になり得る事実も知ったものです。
子供も大人も、初心者も経験者も、そんなこと関係なく、お互いがD&DやTRPGを通して楽しみながら、いろんな面で自分を見つめ直したり、社会性や人としての関係性を学び育み合える機会が、いろんなところで増えていくと良いですね。
~ひとまず、お・わ・り?~
(注:実際のプレイ時には記録撮影はしなかったので、後日改めてダンジョンパーツを組み立て、プレイ状況を思い出しながら再撮影しました。今回の記事画像は、すべてそれで構成しています)