参加者は、Nさん、Sさん、小②Aさん、そしてMaster。
DMは、リーダーMasterが担当。
プレイ時間は、9時30分~17時00分でした。
PCのパーティ構成は次の通りで、全員7レベル冒険者です。
・NさんPCウィザード・モラウ(ヒューマン)
・SさんPCドルイド・セロン(ヒューマン)
・小②AさんPC(に昇格した)ファイター・ダングリム(マウンテン・ドワーフ)
・NPCローグ・エレヴァン(ハイ・エルフ)
連続ストーリー物キャンペーンと言うことで、前回のストーリー(例会レポ:第25回参照)の終わり部分からすぐつながる形で今回は始まります。
今回も、DMは趣向を変え、D&D4版当時に公式で採用されていた“シーン制”“ダンジョン・デルヴ”方式にてシナリオ展開することにしてみました。
シーン1:ピンチからの脱出
流れ者の農婦マヤンことデヴィル〈美しく太った御方〉の策略にはまり、冒険者一行は今、絶対絶命の危機に陥っていました。閉じ込められた大ホールの天井全体から沢山の太い針が飛び出し、凶器と化した天井が徐々に下に向け、きしみながら下がってきているのです。冒険者達は最後まで諦めずに脱出を図りますが、万策尽き、押し潰されるのを待つばかりになりました。
「ああ、もうここでおしまいか・・・」と鼻先まで針が近付こうとしたその瞬間。どこからか中年男性の声がしてきます。
「おい、お前ら、なに昼寝を決め込んでるんだ?! 永遠におねんねするにはまだまだ100年は早いぜー?!」外の通路にある装置を操作、罠を解除し、ピンチから救ってくれたのは、なんと冒険者達が良く知る男ギャルドン警備隊長だったのでした。
PY一同「ギャルドン警備隊長?! 生きていたのかッ?!」
アンダーダークの地下水湖ではぐれた彼は生き延びており、遅れは取ったものの、ドゥエルガル砦では冒険者も接した最後の生き残り兵士から、修道院ではニーチェ修道院長はじめ修道女達から、ダガーフォードの街そばの森では偶然遭遇したモーウェン公から、それぞれ情報を得ながら、冒険者達の後を追って街まで戻って来たとのこと。そして冒険者達は、街の兵士(や諜報員)なら誰もが知る、秘密の地下通路を使って城に向かっているに違いないと見当をつけ、こうしてここに現れたのでした。
「おい、デボレ、怪しいお客さんは来ていないだろうな?」ギャルドン警備隊長がいきなりホールの外に声をかけると、通路から情けない青年の声が聞こえてきます。
「あ、はい。隊長殿、きておりませんです!」顔を覗かせてきたのは、20歳くらいの新米兵士でした。「大丈夫、こいつ、デボレは信用できる。操られてもいない。しかし、まさか正規メンバーとして登録も延期になったおかげで敵さん側に存在が知られずに済んだとは、悪運が強いというか、何というか。それでいてこの状況になったからこそ一番役に立ってくれるとは、な。世の中、うまく出来てるもんだぜ。・・・さて、やつらが舞い戻るかも知れないし、今はここから離れよう」そう言いながら、ギャルドン警備隊長は冒険者達を案内して歩き出したのでした。
以下、ギャルドン警備隊長と新米兵士デボレから得た情報です。
・領主の城である城砦ならびにダガーフォードの街には、有事に備え地下の秘密通路がそれこそダンジョンのように張り巡らされている。城から街へ、街から城へ、勿論、城壁の外にもと、色々な場所に人知れず秘密の出入口がある。(「だが、一般兵に知らされている以外にも、一部の上層部の人間にしか分からない、秘密通路の更に奥に“まったく別の秘密の通路や部屋”もあるんだぜ?!」と、ギャルドンは通路の途中に隠されていた隠し扉を開け、別の秘密ルートに一行を導いたのだった)。
・二か月前、デボレは町の兵士募集に応募したが、肝心の面接の時に具合を悪くして休んでしまい、次回面接時まで採用は見送りにされた。だが優しいギャルドン警備隊長の計らいで、兵士団の下っ端として働かせてもらえることになったのだった。それが逆に幸運につながったのである。ディアベル嬢が領主になった後、城の中のことを執り行っている色々な面々――メイドやコック、執事、騎士、兵士団の面々――が、再面接として順次ディアベル嬢に呼び出された。城に出入りできる人間として正式に登録されている者は一人残らず。戻ってきた先輩たちに聞いた話だと、面接は特に他愛もないもので、「これからも宜しくお願いしますね」と言うねぎらいの言葉で締めくくられていたらしい。その時、ディアベル嬢の計らいで、全員に珍しいとても美味しいジュースが一人一人に差し出されたとも、デボレは聞いた。それが魔法の薬だったのは明白で、2~3日後から全員の様子が一気におかしくなっていったのだった。城の内部に関わる者はすべて別人のようになってしまい、ディアベル嬢だけに従い、命令には決して背かない奴隷人形みたいにされてしまったのだ(冒険者達は、鉱山奥の秘密施設に残されていた奇妙な薬の残り、修道院で修道女達が騙され作らされていた薬、あれがここでも利用されたのではないか? と推理)。
・下働きかつまだ登録もされていなかったデボレだけが呼び出されず、存在も知られずに助かり、しかし彼はどうしていいかわからず、城の中で目立たぬよう黙々と雑用だけして、様子を見ながら生き延びてきていたのだった。そして先刻、街に戻ってきたギャルドン警備隊長と再会、事情を説明し――今ここにこうして一緒にいるという。
・地下組織についてだが、その様なものは存在しない。一般住民は町の兵士を怖れ、夜な夜な現れるというアンダーダーク生まれと思わしきモンスターに怖れ、ほとんど家から出て来ようとしない。町の政治を執り行うのに協力している重要人物や、大きな商いをしている商人や、有名どころの人々は、やはり順次ディアベル嬢に呼ばれ、ジュースを飲ませられたり、もしくは噂によると反抗的な者は事故死に見せかけられて殺されたり、おかしなことにアンダーダーク生まれのモンスターに、まるでターゲットにされたかのように付け狙われたあげく殺されたりしてしまっているのだと言う。
・ディアベル嬢は基本、3階の自室にほとんどいるそうで、滅多に外に出てこないという。デボレも実際に姿を見かけたのは、ディアベル嬢がダガーフォードの街に戻ってきた初日だけ。その時、彼女の命令でデボレは城の住人達と共に、彼女が乗ってきた馬車に乗せられていた巨大な三面鏡を3階の彼女の自室まで運ばさせられたという。とてつもなく重い上に、「大事な品だから、落としたり、決して傷つけないように!」ときつく命令されたらしい。
ギャルドン警備隊長「デボレから聞かせられた話から察するに、普通の手段は勿論、一般的な秘密通路ではもう城には潜り込めないだろう。敵さん側にすべてが乗っ取られていると考えた方が自然だからな。だから今、俺達がいる“超極秘ルート”から入り込むしかない。断言はできないが、今のところ敵さん側に動きが見られないし、まだこのルートは見つかっていないのかも知れないからな・・・。ダガーフォードの街の様子はどんどんおかしくなっているようだし、完全に手に負えなくなるまで、もう時間がないように思えてならない・・・迷っている暇はないということだ、な・・・」
選択の余地も時間もなく、冒険者達はギャルドン警備隊長の言葉にうなずくしかなかったのでした。
PC(PY)達は話し合い、ニセモノのディアベル嬢を倒すこと、おそらく〈はぐれられた御方〉にとって計画上なにか重要な品であるのだろう三面鏡の破壊を目標に掲げ、再度、出発したのでした。
シーン2:城砦内部へ向かって
ギャルドン警備隊長ならびに新米兵士デボレに案内され、街の地下に広がる超極秘ルートを進む一行。そこはまさしく複雑怪奇なダンジョンで、通路は様々なところで枝分かれしており、案内がなければひと冒険しているところでした。
やがて通路は地下水路に沿った道になっていきます。デボレの持つランタンの明かりの先、もう少し進んだところに両開きの扉がうっすらと見えてきました。「城の秘密の入り口は、あそこだぜ!」と、ギャルドン警備隊長が語気を強めて言います。
技能の〈知覚〉判定に成功した冒険者達は、いま来た通路と扉の脇に延びている通路から、何者か達が近付いてくる気配を鋭く察知しました。
ギャルドン警備隊長「チッ、もう極秘もくそったれもないな! どこもかしこも敵ばかりかよ?!」
PC一同「敵さんが来るってことは大体予想はついていたさ。しかし、挟み撃ちか・・・」
不意討ちは回避できますが、通路の前と後ろの挟み撃ち状態。逃げ道がありません。
視界内に現れたのは、それぞれダガーフォードの騎士に率いられたナシック2体ずつでした。
冒険者達はふた手に分かれて迎え撃つことにします。
前方には、NさんPCウィザード・モラウ(ヒューマン)、小②AさんPC(に昇格した)ファイター・ダングリム(マウンテン・ドワーフ)。
後方には、SさんPCドルイド・セロン(ヒューマン)、NPC(KさんPC)パラディン・シルヴァー(ヒューマン)。
NPCローグ・エレヴァン(ハイ・エルフ)は、戦闘の状況に合わせながら、弓矢にて両者の手助けをします。
DM「く・さ・れ・ビーム、発射~ッ!」
ナシックは離れたところからひたすら“腐敗の光線”攻撃を仕掛けてきて、PC達を悩ませます。繰り返されるセーヴ。失敗するたびジワジワと減らされていくPC達のHP。
前方チームは、小②AさんPC(に昇格した)ファイター・ダングリム(マウンテン・ドワーフ)の近接攻撃ならびにNさんPCウィザード・モラウ(ヒューマン)の遠隔呪文攻撃で応戦。
後方チームは、近接攻撃を行うも攻撃ロール失敗続きで苦戦するNPC(KさんPC)パラディン・シルヴァー(ヒューマン)を見て、SさんPCドルイド・セロン(ヒューマン)が、カンジャー・アニマルズ呪文でジャイアント・オクトパス2体を水路に召喚。触手でナシックを拘束状態にします。が・・・“腐敗の光線”を発射させるのに支障なし。
ひたすら叩く小②AさんPC(に昇格した)ファイター・ダングリム(マウンテン・ドワーフ)、拘束状態のナシックをひたすら叩くNPC(KさんPC)パラディン・シルヴァー(ヒューマン)。
なんとかナシック群を倒し、「操られているだけのはずだから、殺しはしません」というPY判断から、騎士たちのことを気絶させるところまで追い込んだPC達は、彼らをロープで縛り上げたのでした。
ーーさて、冒険者達は、それぞれの通路の奥の方から更に押し寄せてくるたくさんの気配を感じ始めます。
新米兵士デボレ「た、隊長殿、ダメっす~! やばいくらいのやつらがここに押し寄せてきますよ~!!」
ギャルドン警備隊長「こういう場合は広いところで戦わず、わざと狭いところで待ち受けて戦うんだよ。仲間を先に逃がして、俺達は待ち受けるんだ!」
一行は扉の中に飛び込みます。そこは小さな部屋になっており、奥の壁にまた扉が見えました。
ギャルドン警備隊長「時は一刻を争う。どの道、ここから先は足手まといになるんだろって思ってはいたんだ。俺とデボレはここに残り、追っ手を食い止める! お前ら、後のことは頼んだぜ?!」
新米兵士デボレ「俺も頑張るっス。冒険者の皆さん、〈はぐれられた御方〉とかってやつのこと、絶対にやっつけて下さいよ!!」
通路側から出入口の扉を叩き壊し侵入してこようとする騒々しい音がし始めます。
グズグズしている暇はなく、冒険者達はギャルドン警備隊長と新米兵士デボレに礼を述べると、複雑な思いに駆られながらも素早くランタンに火を灯し、扉の奥の隠し通路を足早に進み始めたのでした。
シーン3:対決のマヤン!
こうなることを予期していたのだろう、先ほど通路奥の扉の前にたどり着くまでの間にギャルドン警備隊長は、冒険者達に城砦内部の隠し通路のルートを説明してくれており、迷うことなく一行は城砦の3階、ディアベル嬢の部屋があるすぐ傍の通路に出る秘密の出入口(隠し扉)までたどり着きました。
PC一同「なんか・・・おかしくね?」
隠し扉を少しだけ開け様子を伺ったPC達は、不気味に静まり返っている城砦内を見て首を傾げました。3階の通路はどうやら人っ子一人いないようで、PC達は怪しみます。
小②AさんPC(に昇格した)ファイター・ダングリム(マウンテン・ドワーフ)「多分、ニセモノ・ディアベル嬢が〈はぐれられた御方〉本人で、ここが最後の戦いになるんじゃない?」
NさんPCウィザード・モラウ(ヒューマン)「う、う~ん・・・」
SさんPCドルイド・セロン(ヒューマン)が、クラス特徴“自然の化身”にてスパイダーに変化、ひとまず偵察に繰り出しました。
でも、やはり通路も、ディアベル嬢の部屋付近もガラガラ。重要な場所のはずなのに見張りがいません。というか、本当に誰もいない・・・。
念の為にディアベル嬢の部屋の様子を探ると、どうやら室内に設置されているバスタブセットにて彼女は入浴中のようでした。気配は、彼女一人だけのようです。
そそくさと仲間の元に戻り、SさんPCドルイド・セロン(ヒューマン)は様子を説明して聞かせます。
SさんPCドルイド・セロン(ヒューマン)「事情は分からないが、ディアベル嬢と思わしき人物以外の気配がしない・・・どうなってるんだ・・・?」
小②AさんPC(に昇格した)ファイター・ダングリム(マウンテン・ドワーフ)「早く最後の戦いをすませよう! 昼ごはんの時間!!」
一見、ドワーフらしくロープレしているように見えて、実はリアルにプレイ時間がお昼タイムに食い込み、空腹を訴え始める小②Aさんでした。
DM「(。-人-。) ゴメンネ」
NさんPCウィザード・モラウ(ヒューマン)「ここでジッとしていても埒が明かない。ディアベル嬢の部屋に乗り込もう!」
PY全員の意見が一致、ディアベル嬢の部屋の前まで行きます。聞き耳を立てると、中から美しい乙女の歌声が聞こえてきました。
水音がすることから、今も入浴中のようです。
冒険者達は中に飛び込みました。
部屋の中はかなりの広さで、気品に溢れた雰囲気に満ちています。かぐわしい香水のかおりがどことなく漂っていました。
部屋の奥に半透明のシースルー仕様のパーテーションがあり、その向こう側に女性のシルエットが微かに浮かび上がっています。丁度風呂から上がり、今まさにタオルを身にまとったその影がディアベル嬢であることは察せましたが、冒険者達はすぐに嫌な予感を感じ取りました。
――ディアベル嬢は、あんなにふくよかだっただろうか?
――ディアベル嬢は、あんなにあからさまにお尻を振りながら歩いただろうか?
――ディアベル嬢は、あんなにもいかにもといった貴族の女性が見せるような仕草を、それもわざとらしく大胆にポーズを決めながら、なりふり構わず一人でおこなって見せていただろうか?
パーテーションの左端から真っ白い陶器製の風呂オケが見えたのですが、良く見れば中には赤黒い水がためられており・・・。
PC一同(「違う・・・、あれはお湯じゃない!」)
冒険者達は口を押えます。風呂の中はウネウネとうごめく大量のミミズが入れられていたのです。
ついたての右端まで歩いてきたディアベル嬢が、タオルからその太い生足を出し、パーテーションから飛び出させて冒険者達に披露し、こう告げてきました。
流れ者の農婦マヤン「冒険者の旦那様方、わたし、ディアベルお嬢様よ~、うふふ、き・れ・い・ッ?! 来てるの分かったから、待ち伏せして、お待ちしておりましたわ~ん♥」
ガバッと顔を出してきたのは、ホホベニ、口紅、マスカラなどをドギツク、顔からはみ出す程に塗りたくった、見るもおぞましい醜い女、こっけいにすら見える、流れ者の太っちょ農婦マヤンこと、デヴィル〈美しく太った御方〉だったのです。
冒険者達がギョッとした途端、今までしていたかぐわしい香水の香りが、突如として死臭に変わり果て、マヤンがみるみるうちにデヴィルの姿に戻りました。
PY・Sさん「なんとも凄まじい情景描写だ・・・(滝汗)」
デヴィル〈美しく太った御方〉マヤン「旦那様方、ここにディアベル嬢様はもういないよ。おいらが相手して・あ・げ・る♥ これが本当にお前たちが目にする最後の光景になるのさ。この美しいおいらに殺されることを光栄に思いなーッ!!」
ドスが効いた声を出し始めたデヴィル〈美しく太った御方〉マヤン。見れば風呂桶の中のミミズが縁からあふれ出し、4つの塊にまとまると、巨大な脳に触手が生えたようなクリーチャー――グレルに変化します。
デヴィル〈美しく太った御方〉マヤンとの最後の戦いが、今まさに始まりました!
デヴィル〈美しく太った御方〉マヤンはインヴィジビリティ呪文で姿をくらまします。そしてグレルにPC達の相手をさせ、急襲を仕掛ける為に遠回りをしながらPC達にこっそり近付こうと動き始めました。
PC達とグレルの戦いは、冒険者グループの前衛による近接攻撃に加え、NさんPCウィザード・モラウ(ヒューマン)のファイアーボール呪文による大ダメージにより、着実にPC側優勢で展開して行きます。
残されたグレルもそろそろ墜ちそうかと言う時、NPC(KさんPC)パラディン・シルヴァー(ヒューマン)がマヤンの行き先を調べるべく、クラス特徴“聖邪感知”を行いました。
DM「今、それを行いますか~?! 何という超タイミング!! 彼女はまさしくシルヴァーの真横のマスに、先の自身のターンで辿りついたところです!!」
NPC(KさんPC)パラディン・シルヴァー(ヒューマン)の隣にデヴィルのフィギュアを配置するDM。
PY・Sさん「ここまでジャストなデザインのフィギュアがあるのか・・・(滝汗)」
それほどせずグレルは全滅、デヴィル〈美しく太った御方〉マヤンは魔剣による近接攻撃にて、小②AさんPC(に昇格した)ファイター・ダングリム(マウンテン・ドワーフ)とNPC(KさんPC)パラディン・シルヴァー(ヒューマン)に多大なダメージを与え続けますが、冒険者全員による集中砲火により、それほどもたずに倒されてしまうのでした・・・。
デヴィル〈美しく太った御方〉マヤン「すごい、すごい!! さすがは我々を困らせ続けてきた旦那様方だ!! 今回はおいらの負け。おいらは地獄に戻るとするよ~。いつか、旦那様方が地獄まで冒険に出かけてくるのを楽しみに待っていることにするよ。ギャハハハハハハハーッ♥」
デヴィル〈美しく太った御方〉マヤンの皮膚が溶け始め、肉が腐り、腐臭を漂わせながら肉塊がボロボロと床にこぼれ始めます。髪がハラハラと抜け、耳が落ち、目玉が取れ、右手、左手が、と、次々に彼女の体から部位が取れて行き、完全に崩れ落ちると、その床に広がった汚らしい肉塊は、奇妙な音を立て、蒸発するかのように徐々に消え去っていったのでした。
最後に、微かに不可思議な七色の光を放つ綺麗なペンダントが床に残されました。NさんPCウィザード・モラウ(ヒューマン)が拾うと、いきなりペンダントが「パキッ」と音を立てて真っ二つに割れてしまいます。
するとその内側から、ひとつの光りの塊“何者かの魂”が飛び出してきました。どうやらそれは、殺害された後に魔法のペンダントに封じ込められてしまっていた本物のディアベル嬢の魂のようでした。
本物のディアベル嬢の魂「ようやく・・・解放されました・・・私はディアベル・・・あなた達が修道院の地下で見つけた、頭を破壊されてうち捨てられていた、白骨化したあの体に宿っていたものです・・・。あなた達の知る〈はぐれられた御方〉は、私が修道院に行って間もない頃に私を殺し、私に化け、何食わぬ顔で私として振る舞うようになりました。魂となった本物の私のことは用無しと、デヴィル〈美しく太った御方〉マヤンに「好きにしなさい」と差し出したのです。マヤンは私をペンダントに封じ込め、ペットのようにしておりました。〈はぐれられた御方〉は先ほど、2名の人間離れした巨体の持ち主である近衛兵達に巨大な三面鏡を持たせ、自らも街の中心地にある大教会に向かいました。あの三面鏡は、〈はぐれられた御方〉が自らの魔の力を宿らせた“魔鏡”です。様々な邪悪な行いをする為の、彼女の大切な道具なのです。〈はぐれられた御方〉の計画は、最終段階に移ろうとしているようです。彼女は狡猾で、策略家です。自らの行為が目立つのを知っているので、最終段階である三面鏡の運搬――わたくしディアベルの部屋にひとまず運んでおいた――を、誰にも邪魔されないだろうこのタイミングが訪れるまで、待っていたのです。大教会で何か邪悪なことを行おうとしています。食い止めてください・・・」
ディアベル嬢の魂は、この部屋の側にある隠し扉奥の通路から伸びる、町の中心部に通じている秘密通路の存在を伝えてきてくれました。
彼女は、わがままだったこと、そしてこの事件に間接的にも関わってしまっていたことを詫び、少しでも罪滅ぼしにと、冒険者達に聖なる力をそそぎ込んでくれます。不可思議なそのパワーで、PC達のすべてのHPとリソースが回復しました。
彼女の魂は浄化され、昇天しました。それを見届けた冒険者達は、ダガーフォードの街の中央にある大教会へ急いで向かうことにしたのです。
~〈後編〉に、つづく~